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生活の中の美!
先日、現在大々的にPRされている長谷川等伯特別展に行こうと、「思い立ったら吉日」の精神そのままに東京・上野の東京国立博物館に行くと、2月24日からの開催であることが判明。ショック!完全なる勇み足でした。計画性は大事です。
気を取り直し、以前から行きたいと思っていた目黒の「日本民藝館」に行ってきました。民藝運動の中心人物である柳宗悦氏が初代館長をつとめた昭和11年開館の美術館です。
柳氏は民藝館について、「列べ方も事情の許す限り物の美しさを活かすやうに意を注いである。品物は置き方や、列べる棚や、背景の色合や、光線の取り方によって少なからぬ影響を受ける。陳列はそれ自身一つの技藝であり創作であって、出来るなら民藝館全体が一つの作物となるやうに育てたいと思ふ。とかく美術館は冷たい静止的な陳列場に陥り易いのであるから、もっと親しく温い場所にしたいといつも念じてゐる。」と記しています。(柳宗悦「日本民藝館案内」より)
この柳氏の「温い場所にしたい」という言葉通り、まず入館時に靴を脱いでスリッパに履き替えるのですが、なんだか誰かのお宅にお邪魔させていただくような錯覚に陥る導入です。館内もずっしりとした年代ものの家具が所々に置かれ、居心地がよく、ゆったりとした気分になれる空間でした。
今回は特別展として「編み・組みの手技」が開催中で、カゴや蓑(ミノ)が数多く展示されていました。私自身もプライベートで自然の素材を使ったモノづくりをしたり、仕事でその指導にあたることもあるのですが、「原料をただの物資のみと思ってはならぬ。そこには自然の意志の現れがある。」(柳宗悦「雑器の美」より)とあるように、「自然の意志」を受け止めることのできる感性を備えた自分自身でありたいと強く感じました。
陳列されている作品は、ふだん私が美術館等で見慣れている洗練されたシャープな印象の美術品とは違い、ゴツゴツした生活感あふれる作品が多くあり、実際に生活の中で使われていた時代のパワーを感じる品々でした。作品を通して、各時代にそれらを使っていた人達へ思いを馳せ、その繋がりを楽しむのも生活感あふれる作品の楽しみ方の一つなのかもしれません。
モノづくりには作る側の心意気や、使う側の精神が後々にまで残るものであることを改めて実感し、日常生活の中で使うモノにもそんな心で接し、心と心の交流を感じることができれば日常生活がもっと豊かなものになるのかなぁと思い、ちょっと奮発してご飯茶碗を買って帰ってきました。
2010.02.06